~2021.08.31 夏服最後の日~
この仕事(アパレル)に就いた37年前から、僕の9月に「夏服」という選択肢が消えた。例えばその年の8月末が極端に涼しければ、例外的にそれは8月の27日とか28日になる事はあるけれど、大概の場合はその日は8月31日という事になる。そう。僕の「夏服最後の日」。
これもまた大概の場合、その8月31日が無慈悲に暑く、明日の9月1日に迎える「秋服最初の日」がとてもとても憂鬱でこの時期だけはアパレルに身を投じたことを恨んだりしてみる。「武士は食わねど高楊枝」と嘯いて、秋物に身を包むが正直暑い。しかも一時的に涼しい日が来ても、暑さのぶり返しは必ず来る。もう春夏の服はクリーニングに出し、クロゼットの大幅入れ替えは進行しているので、一度秋を立ち上がらせたら2度と戻れない。悲愴な決意なのである。
令和3年8月31日。今年の僕の「夏服最後の日」は、日中は31度まで上がってやっぱり明日からを悲観させる気候だったけど、それでも朝晩の風は涼しく、9月1日からの秋気温予想を裏付ける、ちょっと嬉しい日になった。
で、唐突に質問などしてみる。みなさん、8月と9月を明確に分けるもの?って何だと思いますか?で、唐突な質問をしながらも、明確な答えを持っているわけではない。まあこれは非常に私的な書きなぐり文章なので、仕方ない。エッセイ(随筆)なんてレベルでもない。そこらのBlogにも劣る、非常に自堕落な駄文であるからして許して頂きたい。
今年は、先ほども触れたように幸いにも9月1日から一気に秋気温になったので、僕の「秋服最初の日」は、悲惨な汗まみれにはならなくて済んだのだが、例年なら殆どの場合こうはいかない。8月の下旬から9月の(下手したら)10日ぐらいまでは同じような気温が続いているはずなのだ。まあ確かに、徐々に日が落ちるのが早くはなるし、虫の音も聞こえ始める。でもそれが8月31日と9月1日を明確に分けるファクターに成り得るか?と言われれば、答えはNOとしか言いようがない。
僕なりに思うところ(私見なんて立派なものじゃありません。個人的な偏見です。)を述べれば、小学校から高校までは、9月1日から学校が再開するというのが8月と9月の大きな違いなんじゃないかな~?と。北海道とか沖縄のカレンダーはどうなっているかはちょっと定かではないけれど、殆どの日本人の原体験から言えば、9月1日は「学校が始まる日」という意識が植え付けられているのではないかと思う。大学生になれば、9月の20日あたりまで(うちの大学はそうでしたね。人がいないリゾート地の寂しさはよく知っていますよ。値段は一気に安くなるので、9月に旅行はいっぱいしましたけど。)大学によっては9月いっぱい夏休みだったりするし、社会人になればそれがお盆明けにあたるのかもしれない。でも「夏の終わり」(=恋の終わり?)をテーマにした歌(けっこう数多い)では、9月イコール「夏の恋が終わる月」とか「リゾート地から街に帰る月」みたいな表現が多いのは、やはり前述した「殆どの日本人の原体験から言えば、9月1日は『学校が始まる日』という意識」が少しは関係しているのかな?とも思ったりもする。
その「夏の終わり」(=恋の終わり?)をテーマにした歌、というのは僕的には結構好きなジャンルで(昔、違法に配ったオリジナル編集のCDでは良くこのテーマで作りました)、切なさ溢れる良曲が多いと思っ。
例えば(マイナーな曲ばかりで本当に申し訳なく思いますが、その印象的な歌詞の一部分も書き出しておきます)、稲垣潤一の「想い出のビーチクラブ」(夜通し騒いだ避暑地の夢が醒めれば哀しい大人になってた。夏のボートで君が僕を呼ぶ)とかチェッカーズの「Cherie」(出会いが眩しすぎて恋人はいないと嘘をついた)、杏里の「DJ.I Love You」(あぁ夏の恋がカレンダー塗りかえてゆくよ、いつもせつなさで。街へ走るラジオで私を思い出して)、松田聖子の「マイアミ午前5時」(マイアミの午前5時。街に帰る私をやさしく引き止めたら、鞄を投げ出すのに)、EPOの「身代りのバディー」(九月なかばの 渚のうねりに私も心まかれて 沈んだ)など、いずれも夏の恋が終わる(遊びの時間が終わり、街へ帰る=現実に戻る的な)儚さ、寂しさをそれぞれの表現で感じさせてくれる名曲だと、僕は勝手に思っている。もしかしたら、9月に彼女がいた事が無かった若かった頃の自分の孤独感とか、誰もいなくなったリゾート地とか、今はもうどこにいるのかも分からないずっと好きだった彼女の事とかを抱えたまま歳だけ重ねてしまった自分へのレクイエムを求めているだけなのかもしれない。
今年の9月1日。つまり僕の「秋服最初の日」には秋物の綿ビロード?(=別珍って今は使わないか。。。)もしくはベロア?の紺のジャケットを着ながら歩いた歯医者までの道。予想以上に涼しくなった天候の変化に感謝しつつ、そんな事を考えていた。
貴女の「秋服最初の日」はいつですか?
「夏服 最後の日」
歌:杉山清貴
作詞:松井五郎
作曲:杉山清貴