~2022.10.05 冬の唄~
「季節の針」が進む。それ自体はこの世界において(例え極北に居ようと季節はあるのだ)当たり前の事なのだが、それをどう捉えるか、どう感じるか、で人生はずいぶんと見え方が違ってくるように思う。
元々単細胞でお祭り好きで天性のオプティミスト(楽観主義者)な私は、季節の針が進んでいくのが嬉しくて仕方ない。春が近くなれば、どこかに春の香りや兆しを探したりするし、桜の開花情報を毎日ウェザーニュースでチェックしたりする。夏に向けては、早く暑くならないかとワクワクしたりもするし、もうずいぶんと夏のリゾートやバカンスには縁遠いくせに夏に行きたい、過ごしてみたいリゾート情報(最近は沖縄のビーチやモルディヴの高級リゾートホテルとかの動画がお気に入り)をYouTubeで見たりするのが楽しみになっている。若い頃なら「夏の恋」の一つや二つはあったものだし、長い夏休みを控えてワクワクするのも仕方ないと思うが、そういった事には全く無縁の還暦を何年も過ぎた初老の男がワクワクしているのもおかしなものだが、若い頃の記憶とか刷り込みがあるのか夏に向かう季節は今でも嫌いじゃない。
秋になれば、これがまた秋の香りや兆しを探し回る(春と同じ。全く成長してない)のだ。虫の音や涼しくなっていく朝晩の風に秋を無理やり感じようとする。台風一過で一気に秋めいた日の夜に、夏掛けだけでは寒く感じて、薄い羽毛布団を引っ張り出してくるのが嬉しくて仕方ない。春から夏にかけては暖かくそして暑くなっていくのが嬉しいのは、別に「暑い」のが好きなわけでは無い、いやむしろ「暑い」のは辛い。そして同じように「寒い」のも辛い。ただ季節が進んでいくのが嬉しいだけなのだ。
「それって、棺桶に一歩ずつ近づいているってことなんだぞ!」って皮肉を言われても、どうもそういう風にシニカルなとらえ方、大人な考え方、先を見据えた考え方が昔から苦手で刹那的な「今を楽しむ」生き方しかできないのだから仕方ない。
10月も下旬になっていくと今度は冬の匂いを探し始める。寒くなっていく、布団の枚数が増えていくのが嬉しいし、コートを着る日が待ち遠しくなる。そうすると、妙に「冬の唄」が聴きたくなる。それもクリスマスソングではなく、冬という季節の訪れを如実に感じさせてくれる曲が好きだ。それは槇原敬之の「冬がはじまるよ」とか「北風」だったり、Kiroroの「冬のうた」だったりBUMP OF CHICKENの「スノースマイル」だったりスキマスイッチの「冬の口笛」だったりback numberの「ヒロイン」だったりする。(まだまだあるけど、いい加減にしておきます)それぞれ、ワクワク楽しい気分だったり、逆に哀しい思いだったりする曲(割と楽しい曲が多い)なのだが、さりげなく「冬の訪れ」を感じさせるフレーズがこの時期に聴くと染みるポイントになっていたりするのだ。例えばBUMP OF CHICKENの「スノースマイル」なら「冬が寒くって 本当に良かった 君の冷えた左手を
僕の右ポケットに お招きする為のこの上ない程の 理由になるから」という部分。スキマスイッチの「冬の口笛」なら「吐く息が白く光るとケムリみたいってハシャいだ」とか、back numberの「ヒロイン」なら「雪が綺麗と笑うのは君がいい でも寒いねって嬉しそうなのも 転びそうになって掴んだ手のその先で ありがとうって楽しそうなのもそれも君がいい」などが、冬に向かっていく季節には染みるフレーズなのだ。
でも、そのたくさんある「冬の唄」の中でも一つを挙げろと言われれば、絶対にこれだという曲が僕にしては珍しくあるのだ。それは中島美嘉の「雪の華」だ。
「のびた人陰(かげ)を舗道にならべ」という出だしも良い。出だしのこの1フレーズで「冬の唄」だということをはっきり伝えてくれる。そして白眉は「風が冷たくなって 冬の匂いがした そろそろこの街に 君と近付ける季節がくる」という部分。夏に向かってもワクワクするし冬に向かってもワクワクするとは言ったが、やはり夏へのワクワクと冬へのワクワクは質が違う。冬は寒くなって、炬燵に入ったり部屋を暖めたりしてインドアになっていくワクワクなのだ。そんな気持ちを「君と近付ける季節がくる」という歌詞で、あっさりと説明してくれた素敵な曲だと思うのだ。どこか切なくてどこか人恋しくなる季節。
そして季節の針はまた次を指して進んでいく。。。
「雪の華」
歌:中島美嘉
作詞:Satomi
作曲:松本良喜